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小学校、公立か私立か?── 就学前から考える

読了 約17分
5歳娘ママ からの相談 — 小学校受験するか、地元の公立小学校に通わせるか、年中の今、悩んでいる

なぜこの話題が気になるのか

お子さんが年中になると、まわりが急にざわつき始めます。「うちは○○塾に通わせ始めた」「△△小学校の説明会に行ってきた」── そんな話を聞いて、ふと我が家はどうしようと立ち止まる方は多いと思います。

  • 公立小学校でいいのか、それとも私立を受験させるべきか
  • 私立に入れたほうが、勉強ができるようになる?
  • 受験で子どもにストレスを与えないか、心配
  • 受験塾に通わせる時間とお金を、別のことに使うほうがいいのでは
  • まわりが受験するなかで、「公立に行く」という選択を自信を持って選びにくい

これは、年中・年長のご家庭がほぼ通る悩みです。情報の量に対して「決め手」が見えにくいテーマでもあります。ここでは、制度的な事実と、教育研究で言われていることを整理して、ご家庭で判断する材料をお届けします。

まず制度を整理する ── 公立・私立・国立、3つの選択肢

研究の話に入る前に、日本の小学校制度を一度整理しておきます。それぞれの違いを知ると、議論の見通しがよくなります。

公立小学校

Public

設置者: 市区町村 / 児童数の割合: 約98% / 入学方法: 学区による指定校(原則として住所地で決まる) / 年間学習費: 約33.6万円(うち学校教育費は約6.6万円、給食費・学校外活動費を含む) / 教育課程: 文部科学省「小学校学習指導要領」に準拠 / 通学距離: 多くの場合、徒歩圏内

私立小学校

Private

設置者: 学校法人 / 児童数の割合: 約1.3% / 入学方法: 各校の選抜(ペーパー・行動観察・面接など) / 年間学習費: 約182.8万円(うち授業料が約53.6万円、学校外活動費を含む) / 教育課程: 学習指導要領を踏まえつつ、各校独自の特色(宗教教育・一貫教育・国際教育など) / 通学距離: 広域から通学(電車通学が一般的)

国立大学附属小学校

National

設置者: 国立大学法人 / 児童数の割合: 約0.6% / 入学方法: 選抜(抽選+考査の組み合わせが多い)/ 年間学習費: 公立に近い水準(授業料は無償)、ただし学校外活動費・通学費等を加味すると公立より高めの傾向 / 教育課程: 教育研究指定校としての先進的な実践、教育実習の受け入れ / 通学距離: 通学区域に制限がある場合が多い

ここで一つ、押さえておくと安心な事実があります。日本の小学校は公立・私立・国立いずれも、文部科学省の「小学校学習指導要領」に従って教育課程を編成することが、学校教育法で求められています。 文部科学省(2024 令和6年度 学校基本調査(確定値) では、日本の小学生は約594万人で、うち私立小学校に通う子どもは約8万人(全体の約1.3%)、国立小学校は約3.6万人(約0.6%)とされています。つまり、大多数の子どもが公立小学校に通っていて、その上で全国共通の学習指導要領に基づく教育を受けているのが、現在の日本の姿です。

私立小学校の場合は、これに加えて各校独自の特色(宗教教育・系列校への内部進学制度・外国語教育・少人数制など)を持つことが多くなります。系列に中学・高校・大学があり、内部進学(いわゆる「エスカレーター」)で進める学校もあります。

費用の差はどれくらいあるのか

文部科学省(2024 「令和5年度子供の学習費調査」 は、家庭が1年間に子どもの学習にかけた金額を、公立・私立別に集計した公的統計です。小学校では次のような数字が出ています。

  • 公立小学校:年間 約33.6万円(うち学校教育費 約6.6万円、給食費 約4.0万円、学校外活動費 約23.0万円)
  • 私立小学校:年間 約182.8万円(うち学校教育費 約96.1万円、給食費 約5.3万円、学校外活動費 約81.4万円)
  • 6年間合計:公立 約201.7万円、私立 約1,097.4万円、その差 約895.7万円

ここで注目したいのは、私立の費用が高いのは授業料だけではない、ということです。学校外活動費(学習塾・習い事など)も、私立小学校に通うご家庭のほうが大きい傾向があります。受験・通学を含めると、「私立小学校に通わせる」という選択は、家計に対してかなりの長期的なコミットメントを伴うことが、公的統計の数字からも見えてきます。

研究は何を言っているのか

ここからが、この記事の核心です。「私立に入れたら勉強ができるようになるのか?」「公立で大丈夫なのか?」── 教育研究の世界では、こうした問いに対して、ある程度落ち着いた答えが出てきています。

問い1:学校の違いは、子どもの学力をどれくらい決めるのか?

世界で最も広く参照されている学習効果のメタ分析の一つが、ジョン・ハッティの『Visible Learning』です。

メルボルン大学のハッティ(2009

800以上のメタ分析(対象者数 約3億人)を統合した、教育介入の効果サイズランキングをまとめた書籍

では、子どもの学習成果に影響する要因を、「子ども自身」「家庭」「学校」「教師」「カリキュラム」「教え方」の6つの領域に整理した上で、それぞれの影響度を比較しています。

ハッティ自身が繰り返し強調するのは、次の点です。

  • 子どもの学力差を最も大きく説明するのは、「子ども自身の特性(個性・関心・取り組み方)」と「教師の質・教え方」
  • 「学校(school)」という単位での違いは、効果として一定はあるが、「子ども」「教師」と比べて相対的に小さい
  • 家庭の関わり(parental involvement)は効果サイズ d≈0.51 と中程度のプラスで、これは学校種別の差より大きい

つまり、教育研究の大きな知見として、「どの学校に通うか」より、「どの教師にどう教わるか」「家庭でどう関われるか」「子ども自身がどう取り組むか」のほうが、ずっと大きく学力を左右するというのが、現在のおおまかな整理です。

問い2:私立と公立で、子どもの学力に差は出るのか?

「でも、実際に私立に通う子のほうが学力が高い、というデータはあるのでは?」── たしかに、平均すれば私立小学校の子どものほうが、学力テストの得点が高い傾向は見られます。ただし、これを「私立小学校に通ったから、学力が高くなった」と読むのは、研究的には早計です。

ここで重要なのが、家庭の社会経済的背景(SES: Socioeconomic Status)と学力の関係を分析した、世界的なメタ分析です。

ニューヨーク大学のシリン(2005

家庭の社会経済的背景(親の所得・学歴・職業)と子どもの学業成績の関係について、1990〜2000年に発表された74の研究(対象者 計101,157名)を統合したメタ分析(Review of Educational Research 誌)

は、両者のあいだに中程度から強い正の相関(平均相関係数 r=0.299)があることを示しました。

これが意味するのは、こういうことです。

  • 家庭の所得・学歴が高い子どもは、平均的に学力テストの成績が高い傾向がある
  • 私立小学校に通うご家庭は、平均的に世帯所得が高めで、親の教育への関心も強い
  • したがって、「私立に通う子の成績が平均的に高い」のは、私立という学校種別の効果というより、家庭の背景の効果が大きく反映されている可能性が高い

教育経済学者の 中室牧子(2015 『「学力」の経済学』(ディスカヴァー・トゥエンティワン) でも、こうした「家庭の背景と学力の相関」「学校効果と家庭効果を分けて見る重要性」が、日本の読者向けに整理されています。同書では、「子どもの学力差を説明する要因として、学校以上に家庭環境の比重が大きい」という、世界の教育経済学の合意に近い見方が示されています。

問い3:では、学校選びには意味がないのか?

「学校種別の影響は相対的に小さい」と聞くと、「じゃあどこでもいいのか」と感じるかもしれません。研究の言っていることは、もう少し丁寧です。

  • 学校間の「平均的な」差は、家庭の差より小さい
  • ただし、個別の学校・教師・クラスでの「教育の質」は、子どもにとっては大きな違いを生み得る
  • そして、子どもにとっての「合う・合わない」(校風・通学距離・友人関係・教師との相性)は、数字には出にくいが日々の経験としては大きい

つまり、研究が言っているのは「学校選びは無意味」ではなく、「学校種別という大きな括りで論じる意味は思ったほど大きくない。むしろ、その学校の具体的な教育の質・お子さんとの相性のほうが大事」ということです。これは公立を選ぶ場合も、私立を選ぶ場合も、同じ視点で考えられます。

子どもの学力差を説明する要因 ── 学校効果と家庭効果の比較
ハッティ Visible Learning 等の整理から、各要因のおおよその影響度(イメージ)
子ども自身の特性
個性・興味・取り組み方など
約50%
家庭の関わり・SES
親の関わり・所得・学歴等
約25%
教師の質・教え方
個別の教師との相性を含む
約15%
学校種別の差
公立・私立・国立の括りでの差
約5%

数値は Hattie『Visible Learning』、Sirin (2005) メタ分析、中室牧子『「学力」の経済学』など複数の整理から、相対関係をイメージとして示したものです(厳密な単一回帰係数ではありません)。「子ども自身」と「家庭の関わり」が大きな比重を占め、「学校種別」という括りで論じられる差は相対的に小さいというのが、現代の教育研究のおおまかな合意です。

出典:Hattie (2009) Visible Learning、Sirin (2005) Review of Educational Research、中室牧子 (2015)『「学力」の経済学』を編集部で要約

5歳娘ママ

まわりに小学校受験する家庭が増えてきて、うちもしないと出遅れるんじゃないか、と焦りはじめているんです。私立に入れたほうが、結局は学力が伸びるんじゃないかと…。

ねい先生

そう感じる時期ですよね。ただ、世界の教育研究を見る限り、「私立に通えば学力が伸びる」と単純に結論されたわけではないんです。シリン (2005) という大規模なメタ分析で示されたのは、子どもの学力に最も強く相関するのは家庭の社会経済的背景や親の関わりであって、学校種別そのものの効果はそれより小さい、ということでした。

5歳娘ママ

でも、私立に通う子のほうが成績が良いというデータもあるんですよね?

ねい先生

あります。ただ、それを「私立に行ったから成績が良くなった」と読むのは早いんです。私立に通う家庭は、平均的に所得や教育関心が高い傾向があるので、もしそのまま公立に通っていても、成績は高めに出る可能性があります。これを「選択バイアス」と呼んで、教育研究では慎重に分けて見ることになっています。

5歳娘ママ

じゃあ、私立を選ぶこと自体に意味はあるんでしょうか?

ねい先生

意味がないわけではないんです。私立小学校には、宗教教育・少人数制・特色あるカリキュラム・系列校への内部進学など、家庭が大切にしたい価値観や教育方針と合う環境があれば、それは大きな意味になります。ただ、「学力を伸ばすため」を主目的にするなら、研究的な裏付けは、思ったほど強くはない、ということなんです。

5歳娘ママ

まわりが受験するなか、公立を選ぶことが「妥協」のように感じられてしまうのも、つらいんです。

ねい先生

その感覚、よく分かります。ただ、数字で見ると、日本の小学生の約98%は公立小学校に通っています。決して少数派の選択ではなく、むしろ大多数のご家庭にとって、それで何の問題もなく、子どもは育っています。「公立か私立か」で悩むこと自体は自然なことですが、「公立を選ぶ = 妥協」という枠組みからは、少し距離を取ってよいテーマだと思います。

受験というプロセスについて

学校選びの議論で、もう一つ向き合っておきたいのが「小学校受験そのもの」のことです。

小学校受験は、5〜6歳の子どもに対して、ペーパー試験・行動観察・面接・運動などの選抜を行う仕組みです。年中から年長にかけて、多くのご家庭が受験塾に通い、家庭でも長時間の準備を行います。

ここで研究的に確立した話があるわけではありませんが、現場の臨床家・教育関係者からは、こうした側面が指摘されています。

  • 幼児期の長時間の受験準備は、子どもにとって心身の負担になることがある(チック、夜泣き、爪噛み、食欲不振などのストレスサインが見られることがある)
  • 親の不安や緊張は、子どもに敏感に伝わる(家庭内の雰囲気の変化)
  • 合格・不合格という結果が明確に出るため、子どもの自己評価に影響する可能性がある

これらは「絶対に起きる」わけではなく、ご家庭の関わり方によって大きく変わります。一方で、受験を選んだご家庭・選ばないご家庭のどちらにとっても、知っておいて損のない事実ではあります。

受験を「絶対しない」と決める必要も、「絶対する」と決める必要もありません。「我が子の今の様子を見て、無理がないか」「親自身が冷静でいられるか」を、定期的に立ち止まって確認できる距離感を持っておくことが、研究的・実践的にいちばん大事な部分です。

実際にやるならどうするか

研究と制度の整理を踏まえて、ご家庭で考えるときのポイントを整理します。

1. 「学校種別」より「家庭の関わり」を意識する

世界の教育研究で最も繰り返し示されているのは、家庭の関わりが子どもの学力・育ちを大きく予測することです。これは、公立を選んだ場合も、私立を選んだ場合も、同じです。

  • 子どもの話をきちんと聞く時間を持つ
  • 一緒に絵本を読む、宿題を見る、出来事に関心を示す
  • 親が子どもの教育に「関わっている」というメッセージが、子どもに伝わっている状態を保つ

これらは、どんな学校に通っても、家庭でしか作れない土台です。

2. 「学校選び」は、家庭の状況と子どもの個性で考える

「教育的にどちらが優れているか」という一般論で考えるより、こうした観点が現実的です。

  • 家計とのバランス:6年間で約900万円の差は、家庭の長期計画として無理がないか
  • 通学距離・通学時間:朝の電車通学が子どもに合うか、地元の友人関係を大切にしたいか
  • 子どもの気質:大人数の活気のある環境が好きか、少人数の落ち着いた環境が合うか
  • 家庭が大切にしたい価値観:宗教教育・国際教育・伝統文化など、特定の特色を求めるか
  • 系列校への内部進学:中学・高校受験を回避したい場合、私立一貫校に意味がある
  • 兄弟姉妹の状況:上のお子さんと同じ学校環境にするか、選択肢を分けるか

これらは、どれも「家庭の事情」です。正解はご家庭の数だけある、と考えるのが妥当です。

3. 受験を選ぶなら、子どもの様子を中心に置く

私立や国立を受験するご家庭の場合、いくつか意識しておくと安心な点があります。

  • 受験準備は「親の都合」ではなく「子どもの様子」をベースに進める
  • 体調・睡眠・遊びの時間がきちんと確保されているかを、定期的に確認する
  • 合格・不合格の結果について、子どもの自己評価につながらないような言葉かけを準備しておく
  • 親自身が「結果がどうあっても、お子さんを愛していること」を、伝わる形にしておく

受験はゴールではなく、長い学びの入り口です。受験そのもので親子関係が傷つくほどの追い込み方は、研究的・臨床的にも避けたい領域です。

4. 公立を選ぶことを「自信を持って選ぶ」

「私立を選ばない」ことは、消極的な選択ではありません。日本の小学生の約98%は公立小学校に通っており、そこから多くの子どもが育っています。公立を選ぶご家庭にとって、研究は次のような後押しを与えてくれます。

  • 学校種別による「学力の差」は、研究上は思ったほど大きくない
  • 家庭の関わり・子ども自身の特性のほうが、ずっと大きく学力を予測する
  • 通学時間が短く、放課後に習い事・遊び・家庭時間を確保しやすい
  • 地元コミュニティとの関係を、自然な形で築ける

「公立で大丈夫だろうか」という不安に対して、研究は「家庭で関われていれば、ほとんどのお子さんにとって何の問題もない」という答えを返してくれます。

5. 「途中で変える」選択肢も視野に

最初の選択がすべてを決めるわけではありません。

  • 公立小学校に入学して、後から中学受験で私立中学を選ぶ
  • 私立小学校に入学して、合わなかったら公立中学に転校する
  • 国立小学校から、内部進学や高校受験で別の進路を選ぶ

「6歳の時点で決めたことが、12年間絶対」と考える必要はありません。教育の選択は、子どもの成長と家庭の状況に合わせて、調整できるものです。

締めの対話

5歳娘ママ

お話を伺っていて、「公立か私立か」という問いの立て方が、少しずれていたかもしれないと思えてきました。

ねい先生

決してずれてはいないですよ。多くのご家庭が、同じ問いに向き合われます。ただ、研究の整理を踏まえると、「どの種類の学校か」より、「うちの家庭の状況に無理がないか」「うちの子の気質に合うか」「家庭で関わる時間が確保できるか」── このあたりに、軸を移してみると、選択肢が少し見えやすくなることが多いんです。

5歳娘ママ

まわりが受験すると、「うちもしないと」と焦ってしまっていたんですが、必ずしも全員が受験しているわけではないんですよね。

ねい先生

そうなんです。文部科学省の学校基本調査でも、日本の小学生の約98%は公立小学校に通っています。受験は、選択肢の一つで、選ばないご家庭が圧倒的多数派です。それで何か不利になるという話ではなく、むしろ家庭の関わりや教師との関係、お子さん自身の取り組みのほうが、ずっと大きく育ちを予測することが分かっています。

5歳娘ママ

では、私立を選ぶことには、どんな意味があるんでしょう?

ねい先生

意味は確かにあります。たとえば、特定の宗教的・文化的価値観を子どもに伝えたいとき、少人数で手厚い環境を望むとき、中学受験を回避してゆったり過ごしたいとき、系列の中・高・大に進ませたいとき。これらは、研究で「効果がある/ない」という話というより、家庭が大切にしたい教育観そのものです。それと合う私立校があるなら、選ぶ意味は十分にあります。

5歳娘ママ

受験するかしないかで、まだ揺れているところがあって…。

ねい先生

揺れていていいんです。年中・年長の今の時点で、最終的にどちらにするか決め切る必要はありません。お子さんの様子を見ながら、ご家族で話しながら、半年ごと・季節ごとに見直していけば大丈夫です。大事なのは、どちらを選ぶにしても、お子さんが今の毎日を伸びやかに過ごせていることです。

5歳娘ママ

なんだか、少し肩の力が抜けました。

ねい先生

その感覚、大切にしてください。「最良の選択を一度で当てる」よりも、「お子さんを見ながら、家族で対話して、調整していける状態」のほうが、長い目で見るとずっとお子さんの育ちに効きます。公立を選ばれるご家庭も、私立を選ばれるご家庭も、研究的にはどちらも「正解」になり得ます。家庭の状況とお子さんの個性で、どうぞ自信を持って選んでください。

研究の詳細

Primary sources
Strong Sirin, S. R. 2005 Review of Educational Research, 75(3), 417-453

研究デザイン: 1990〜2000年に発表された家庭の社会経済的背景(SES)と学業成績の関係に関する74の独立サンプル研究を統合したメタ分析

対象: 計 101,157名 の児童・生徒、6,871校、128の学区を含む

主要結果: ・家庭の社会経済的背景と子どもの学業成績のあいだに、中程度から強い正の相関(平均相関係数 r=0.299)が確認された ・効果の大きさは、SESの測り方(親の所得・学歴・職業)、成績の測り方、分析単位(個人 vs 学校)等で変動する ・家庭の背景は、子どもの学力差を説明する最も強い要因の一つであり、学校種別の効果より一貫して大きい

限界: 主に米国の研究を中心としたメタ分析。SESと学力の関係は相関であり、因果ではない(SESが直接学力を「作る」のではなく、関連する複数経路を通じて影響する)。

Strong Hattie, J. 2009 Visible Learning (Routledge)

研究デザイン: 教育介入の効果に関する800以上のメタ分析を統合したメガアナリシス

対象: 全世界 約3億人の学習者を含む(以降のアップデート版では2,100以上のメタ分析・約4億人へ拡大)

主要結果: ・子どもの学力に影響する6領域(子ども・家庭・学校・教師・カリキュラム・教え方)のうち、「教師」と「子ども自身」の影響が一貫して大きい家庭の関わり(parental involvement)の効果サイズは d≈0.51 と中程度のプラス ・「学校(school)」という単位での効果は一定はあるが、教師・子ども・家庭と比べて相対的に小さい

限界: 効果サイズの解釈には議論がある(0.40基準を絶対視すべきではない)。また、ハッティ自身が指摘するように、貧困・家庭の資源・健康・栄養といった「学校で変えにくい要因」は本書の射程外とされており、その影響は実際には大きい可能性がある。

Strong 文部科学省 2024 令和5年度子供の学習費調査

制度文書・公的統計: 文部科学省が概ね2年ごとに実施する、家庭が子どもの学習にかける費用の全国調査(2024年12月公表)

内容: ・小学校6年間の学習費総額(年間平均×6年):公立 約201.7万円、私立 約1,097.4万円、その差約895.7万円 ・年間学習費総額:公立 約33.6万円、私立 約182.8万円(5.4倍) ・私立小学校の費用差で大きいのは「授業料(約321万円分)」と「学校外活動費(学習塾費など)」

意義: 公立・私立の学習費に関する最新かつ公式の国家統計。家庭の長期家計計画を考える上で、最も信頼できる出典の一つ。

Strong 文部科学省 2024 令和6年度 学校基本調査(確定値)

制度文書・公的統計: 文部科学省が毎年5月1日時点で実施する、全国の学校・児童生徒・教職員に関する基幹統計調査(令和6年12月18日確定値公表)

内容: ・小学生総数:約594万人(前年度より約10万8千人減少、過去最少を更新) ・私立小学校児童数:約8万人(全体の約1.3%) ・国立小学校児童数:約3.6万人(全体の約0.6%) ・残る約98%は公立小学校に通学

意義: 日本の小学校選択の実態を把握する上での最も基本的な公的統計。「私立小学校を選ぶ家庭は少数派」という事実の裏付け。

Mixed 中室 牧子 2015 『「学力」の経済学』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

内容: 教育経済学の知見を一般向けに整理した書籍。「家庭の社会経済的背景と学力の相関」「学校効果と家庭効果を区別する重要性」「エビデンスに基づく教育政策」などのテーマを、海外の研究を引用しながら解説している

意義: 日本語で「教育のエビデンスベース思考」を平易に紹介した代表的書籍。本記事の SES と学力の関係、学校効果より家庭効果が大きいという論点について、日本の読者向けの参考文献として参照。

限界: 一般書のため、原典の研究は別途確認する必要がある(本記事では Sirin 2005 や Hattie 2009 を併せて確認)。また、教育経済学的知見は政策議論を主目的とした集合レベルの分析であり、個別家庭の選択を完全に方向づけるものではない。