食物アレルギー、早く与えた方がいいの?── LEAP研究で変わったガイドライン
「アレルゲンは避ける」は、もう古い
少し前まで ── 具体的には2000年代から2010年代前半まで ── 多くの育児書や小児科の指導は、「アレルギーが心配な食材は、できるだけ遅くまで避けたほうがいい」というものでした。米国小児科学会(AAP)も2000年に、高リスク児にはピーナッツの導入を3歳まで遅らせるよう推奨していました。「触れさせなければアレルギーにならない」── これが当時の常識でした。
ところが、この方針で世界の食物アレルギーは減るどころか、むしろ増え続けたのです。とくに英国や米国、オーストラリアでは小児のピーナッツアレルギーが2倍以上に増加しました。「避ければ防げる」という前提そのものが、研究によって疑われ始めたのは、こうした背景があります。
決定打になったのが、2015年に発表されたLEAP研究です。これ以降、世界中のガイドラインが順次書き換わり、日本でも2017年に日本小児アレルギー学会が「鶏卵アレルギー発症予防に関する提言」を出して、方針を大きく変えました。「もう古い情報で不安になっている」状態は、研究の世界では数年前に終わっているのです。
- 2000
AAP の回避推奨
米国小児科学会(AAP)が、高リスク児にはピーナッツ導入を3歳まで遅らせるよう推奨。
- 2008
AAP が推奨を撤回
「遅らせる効果のエビデンスは不十分」として、それまでの回避推奨を撤回。
- 2015
LEAP研究の発表
Du Toit et al. が NEJM に発表。ピーナッツ早期導入で発症81%減という決定的な結果。
- 2016
LEAP-On / EAT 研究
NEJM で続報。効果の持続性、および6アレルゲン同時導入の検証が行われた。
- 2017
PETIT研究(日本発)
Natsume et al. が Lancet に発表。鶏卵早期導入で発症約80%減を報告。
- 2017
ガイドライン改定
NIAID(米国)が追加ガイドラインを発表。日本小児アレルギー学会が「鶏卵アレルギー発症予防に関する提言」を発表。
- 2019
厚生労働省ガイド改定
「授乳・離乳の支援ガイド」が改定され、鶏卵を生後5〜6か月から少量で開始するよう明記。
LEAP研究 ── 世界のガイドラインを変えた1本のRCT
何をした研究なのか
重度の湿疹または鶏卵アレルギーを持つ「ピーナッツアレルギーの高リスク児」640人(生後4〜11か月)を、(1)5歳までピーナッツ含有食品を週に少なくとも6gずつ摂取する「早期摂取群」と、(2)5歳まで完全にピーナッツを避ける「回避群」にランダムに割り付け、5歳時点のピーナッツアレルギー発症率を比較したRCT(ニューイングランド医学雑誌)
が、いわゆるLEAP(Learning Early About Peanut allergy)研究です。
ここで重要なのは、この研究の対象が「もっともアレルギーが心配な、ハイリスクの赤ちゃん」だったということです。重度の湿疹がある、すでに鶏卵アレルギーがある ── つまり、当時の常識では「ピーナッツなんて、絶対に早くは与えてはいけない」とされていた子たちです。
結果は、ガイドラインを書き換えるレベルだった
5歳時点の経口食物負荷試験で「ピーナッツアレルギーあり」と判定された割合を、両群で比べると ──
5歳時点のピーナッツアレルギー発症率は、回避群17.2%に対して早期摂取群3.2%。相対リスク減少にして約81%。ハイリスク児を対象とした研究で、この差が出たことが、世界のガイドラインを大きく動かしました。
出典:Du Toit et al. (2015) New England Journal of Medicine, 372(9), 803-813
回避群17.2%、早期摂取群3.2%。相対的に81%の発症リスク減少です。これは、ハイリスク児を5年間追跡したRCTで観察された差であり、観察研究や動物実験ではない、最高水準のエビデンスです。「避けるべき」と信じられてきた行動が、実はアレルギー発症の引き金になっていた可能性すら示した、医学史に残るデータでした。
「やめたら戻るのでは?」という疑問にも答えが出た
LEAP研究の続編として実施されたのが、 LEAP研究で5歳まで摂取を続けた子どもたちに、その後12か月間ピーナッツを完全に避けてもらい、効果が持続するかを検証したフォローアップ研究(LEAP-On、ニューイングランド医学雑誌) です。
結果は、12か月避けても、ピーナッツアレルギー発症率はほぼ変わらなかったというものでした。早期に獲得した「免疫的な耐性(tolerance)」は、その後の一時的な中断では崩れにくい ── これが追加で示されたのです。
EAT研究 ── 6アレルゲン同時導入も、やってみたら
ピーナッツに限らず、もっと一般の赤ちゃんで、複数のアレルゲンを同時に早期導入したらどうなるか。これを検証したのが、 完全母乳栄養の生後3か月の英国の赤ちゃん 1,303人を対象に、(1)生後3か月から6種のアレルゲン(ピーナッツ、加熱卵、牛乳、ごま、白身魚、小麦)を順次導入する「早期導入群」と、(2)WHO推奨どおり6か月まで完全母乳のみで離乳食を遅らせる「標準群」にランダム割付したRCT(EAT研究、ニューイングランド医学雑誌) です。
結果は、研究者本人が「正直に書いた」ことで有名になりました。
- ITT(intention-to-treat)解析では、早期導入群5.6%、標準群7.1%で、統計的有意差なし(p=0.32)
- しかしper-protocol解析(プロトコル通り実施できた子だけで比較)では、早期導入群2.4% vs 標準群7.3%で有意差あり(p=0.01)。ピーナッツアレルギーは早期導入群で0%(標準群2.5%、p=0.003)、鶏卵アレルギーは1.4% vs 5.5%(p=0.009)
つまり、「3か月から6種類同時」というハードルの高いプロトコルを実際にこなせた家庭では効果が明確に出たが、全体平均では『計画通りにできない家庭も多い』ことが現実だった、というのが結論です。これは「無理して6種類同時にやらなくていい」というメッセージにもなりました。LEAP研究と合わせて見ると、「現実的にやれる範囲で、適切な時期に始める」ことが大事 ── というのが、ここから読み取れる実用的な教訓です。
PETIT研究 ── 日本の鶏卵での決定打
ピーナッツの話は、日本のお母さんには少し遠く感じるかもしれません。日本での実情に直結するのが、日本人研究者が日本国内で実施した 生後4〜5か月でアトピー性皮膚炎のある「鶏卵アレルギーの高リスク児」121人を対象に、(1)アトピー性皮膚炎を徹底治療した上で、生後6か月から加熱全卵粉末50mg(9か月から250mg)を毎日摂取する「早期導入群」と、(2)プラセボ粉末を摂取する「回避群」にランダム割付し、1歳時点の鶏卵アレルギー発症を比較したRCT(PETIT研究、ランセット) です。
結果はLEAPに匹敵する明確さだった
1歳時点での経口食物負荷試験で「鶏卵アレルギーあり」と判定された割合。回避群37.7%に対して早期導入群8.3%、相対リスク減少にして約78%。安全性確保のため、アトピー性皮膚炎の徹底治療が前提条件。
出典:Natsume et al. (2017) The Lancet, 389(10066), 276-286
回避群の37.7%に対して、早期導入群はわずか8.3%。相対リスク減少 約78%。LEAP研究のピーナッツ81%減と、ほぼ同等の効果が、日本人の赤ちゃんの鶏卵でも確認されたのです。
この結果を受けて、日本小児アレルギー学会は2017年6月、「鶏卵アレルギー発症予防に関する提言」を発表しました。要点は次の通りです。
- アトピー性皮膚炎は、まず適切に治療して寛解させる(これが安全性の前提)
- その上で、生後5〜6か月頃から「ごく少量の加熱全卵」を試す(固ゆで卵黄の耳かき1杯程度から)
- 自己判断で先に進めず、湿疹のある児・既往のある児は医師に相談しながら進める
この提言は、その後の厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド」2019年改定にも反映されています。
なぜ「早く始める」と、アレルギーが減るのか
ここまでの数字を見て、「なぜ?」と思う方も多いはずです。研究者たちが立てている仮説のキーワードが、「二重抗原曝露仮説(Dual Allergen Exposure Hypothesis)」です。
簡単に言うと、こういう話です。
- アレルギーになるリスクが上がるのは、食物のタンパク質が「皮膚から(とくに湿疹のある皮膚から)」体内に入った場合(=感作)
- 逆に、アレルギーになりにくくなるのは、同じタンパク質が「口から消化管を経て」入った場合(=耐性)
- つまり、口から食べる経験が遅れると、その間に皮膚から先に感作が起きてしまう可能性がある
この仮説が正しいなら、(1)湿疹を放置せず適切に治療し、(2)消化管側からの「食べる経験」を遅らせない ── という二段構えが理にかなうことになります。これが、LEAP研究やPETIT研究の根底にある考え方です。
日本のお母さんが、明日からどうすればいいか
ここまでが、ガイドラインを動かした研究のあらましです。では、生後5か月の娘さんを抱えたお母さんが、明日から何をどうすればいいのか。日本のガイドラインに沿って整理します。
ステップ1:「湿疹があるなら、まず皮膚科か小児科で治療」
これがいちばん最初です。お子さんに湿疹・乾燥肌・かゆみがある場合は、自己判断で卵を始める前に、小児科または皮膚科で皮膚の状態を整えること。保湿剤や、必要に応じた外用薬で「きれいな状態」を作ってから、食物の導入に進みます。これはPETIT研究と日本小児アレルギー学会の提言が一致して強調している点です。
ステップ2:鶏卵は「固ゆで卵黄、耳かき1杯」から
厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド」(2019年改定版)では、生後5〜6か月頃から、固ゆで卵黄を耳かき1杯程度の極少量から始めるよう示されています。具体的には ──
- まず「20分以上しっかり茹でた卵黄のごく一部」を、すり潰してお湯やお粥に混ぜて少量
- 数日から1週間かけて様子を見ながら、量と頻度を徐々に増やす
- 初めての食材は、平日の午前中(医療機関が開いている時間帯)に試す
- 卵白に進むのは、卵黄が安定して食べられるようになってから
ステップ3:与えるタイミングは「朝〜日中、自宅で」
初めてのアレルゲン候補食材を試すのは、体調がよい日の、平日の午前中と決めるだけで、いざというときの安心感が大きく違います。アレルギー反応の多くは摂取後30分〜2時間以内に出るので、「お昼前に少量、午後はゆったり家で過ごす」のが基本パターンです。
ステップ4:症状が出たら、慌てずに、でも記録して受診
口の周りが少し赤くなる、機嫌が悪くなる、軽い蕁麻疹が出る ── このレベルなら、何を、何時に、どれくらい食べたかを記録して、後で小児科を受診します。呼吸が苦しそう、ぐったりしている、嘔吐を繰り返す ── このレベルなら、迷わず救急(#8000 や 119)です。
今のガイドラインが推奨すること
Evidence-supported, post-2015
(1)生後5〜6か月頃から、固ゆで卵黄の耳かき1杯から鶏卵を開始する。(2)湿疹がある場合は、皮膚を先に治療してから食物導入に進む。(3)初めての食材は平日午前中・自宅で、少量から。(4)安全に食べられた食材は、その後も避けずに継続的に食べさせる。
もう古い情報(避けたほうがいいこと)
Pre-2015 approach
(1)『卵は1歳まで、ピーナッツは3歳まで避ける』── 撤回された推奨。(2)『家族にアレルギーがあるから、念のため遅らせる』── むしろリスクを上げる可能性。(3)『湿疹を放置したまま食物だけ慎重に避ける』── 経皮感作の温床になりうる。(4)『一度安全に食べられても、念のため間をあける』── 耐性の維持にはマイナス。
対話 ── 生後5か月娘ママへ
先生、もうすぐ離乳食を始める時期なんですけど、卵が怖くて怖くて…。実は私自身、子どもの頃に少し卵アレルギーがあって、夫の妹も食物アレルギー持ちなんです。「家族にアレルギーがあるなら、卵は1歳過ぎてからのほうがいい」って実母にも言われていて、どうしたらいいか分からなくて。
その悩み、本当によく分かります。お母さんが心配されているのも、お母様の世代のアドバイスも、当時の常識からすればまったくおかしくないんですよ。ただ、ひとつだけ大事な事実をお伝えします。2015年のLEAP研究と2017年のPETIT研究で、世界中のガイドラインが大きく変わりました。「家族にアレルギーがあるから遅らせる」は、もう推奨されていない方針なんです。
えっ、そうなんですか…?でも、与えてアレルギーが出たら、と思うと怖くて。
その怖さは、お母さんとしてごく自然な感情です。でも数字で見ると、「遅らせて避ける」ほうがむしろ発症率が高いんです。PETIT研究では、アトピー性皮膚炎のある日本人の赤ちゃんで、卵を回避したグループの1歳時点のアレルギー発症率は37.7%、早期に少量から導入したグループは8.3%でした。約8割の減少です。
8割も…!でも、うちの娘、ちょっと頬がカサカサしているんです。湿疹って言うほどでもないんですけど、ガサガサする日があって。
それ、すごく大事な情報です。食物の導入を始める前に、まず小児科か皮膚科でその肌の状態を診てもらってください。今のガイドラインで強調されているのは、「皮膚バリアが壊れている状態で食物を体に入れると、皮膚から先に感作が起きてアレルギーになりやすくなる」ということ。逆に言えば、肌をきれいに整えてから、口から少量ずつ食べさせるのが、いまの『予防』の考え方なんです。
肌の治療が先…そういう順番なんですね。
そうなんです。これはPETIT研究でも、参加した赤ちゃん全員に対して厳密に行われていたことなんですよ。保湿と、必要なら外用薬で、まず「きれいな肌」を作る。そのうえで、固ゆでの卵黄を耳かき1杯くらいから、お粥に混ぜて。平日の午前中、自宅でゆったり過ごせる日に始めるのが基本です。
ピーナッツは…日本ではどうなんでしょうか。
日本の離乳食では、ピーナッツそのものを乳児期に積極的に導入する習慣は、欧米ほど一般的ではありません。誤嚥のリスクもあるので、固形のピーナッツは絶対にダメです。ただし、「家族にピーナッツアレルギーが心配だから、子どもにも一切避けさせる」必要はないということは、LEAP研究の流れから言えます。日本で先に整えるべきは、まず鶏卵、それから乳・小麦といった、日本の食卓で実際によく出る食材のほうです。
なるほど…うちの場合は、まず娘の肌を小児科で診てもらってから、卵黄を耳かき1杯から、ということですね。
その方針で大丈夫です。それから、もうひとつだけ。お母さん自身の小さい頃の卵アレルギーや、義妹さんのアレルギーがあるという事実は、「与えない理由」ではなくて、「丁寧に始める理由」として、最初の受診のときに必ずお医者さんに伝えてください。家族歴がある場合は、より慎重なステップで進めることもありますから、専門家と二人三脚で進めるのが安心です。
締めの対話
今日の話で、まずすごく安心しました。「与えること」が怖いことじゃなくて、「丁寧に始めること」が予防になるんですね。
そうなんです。お母さんは「娘さんを守りたい」という気持ちで悩まれていたわけですから、その気持ちはまったく間違っていません。変わったのは情報のほうで、お母さんの愛情が間違っていたわけではないんですよ。最新の研究で分かったことに合わせて、進め方だけ少しアップデートする ── それで大丈夫です。
実母にも、今日の話を伝えてみます。「古い情報で心配してくれてありがとう、でも今のガイドラインはこうなんだよ」って。
それは素敵な伝え方ですね。世代を超えて新しい情報を共有していくと、ご家族全体で安心して見守れる体制ができます。来週、まず小児科でお肌を診てもらうところから始めてみてください。そのうえで、固ゆで卵黄を耳かき1杯、平日の午前中に。ひとつずつ、無理のないペースで大丈夫ですよ。
はい。ひとつずつ、進めてみます。
最後にひとつだけ。食物アレルギーの分野は医療領域ですから、この記事は「最新の研究の地図」としてお使いいただいて、実際の判断はかかりつけの先生と一緒に進めてください。とくに、湿疹がある・すでに何か食物で反応が出たことがある・ご家族にアナフィラキシー既往がある場合は、最初の一口の前に必ず医師に相談することを、何度でもお伝えします。
研究の詳細
Primary sources研究デザイン: 並行群間オープンラベル・ランダム化比較試験(RCT)
対象: 重度のアトピー性皮膚炎または鶏卵アレルギーを持つ「ピーナッツアレルギー高リスク児」 640名(生後4〜11か月、英国)。事前のピーナッツ皮膚プリック試験の結果で 2 つのサブコホート(感作なし群と軽度感作群)に分けて層別解析
介入: 5歳までピーナッツ含有食品を週に少なくとも 6g 摂取する「早期摂取群」 vs 5歳まで完全にピーナッツを避ける「回避群」
主要結果: 5歳時点の経口食物負荷試験でのピーナッツアレルギー発症率は、回避群17.2%、早期摂取群3.2%(相対リスク減少 81.0%、p<0.001)。感作なしサブコホートでも 13.7% vs 1.9%、軽度感作サブコホートでも 35.3% vs 10.6% と、いずれも有意差。アナフィラキシーなどの重篤有害事象の頻度は両群で有意差なし
限界: ハイリスク児に限定した研究のため、一般リスク児への直接的な数字の当てはめには注意が必要。英国を中心としたオープンラベル試験。長期(青年期以降)の効果は別途LEAP-Trio研究で追跡中
研究デザイン: LEAP研究のフォローアップ研究(LEAP-On)
対象: LEAP研究で 5歳まで追跡できた児 556名(早期摂取群と回避群の両方)
介入: 全員に対して、5歳から 6歳までの 12 か月間、ピーナッツを完全に避けるよう要請。6歳時点で再度経口食物負荷試験を実施
主要結果: 6歳時点のピーナッツアレルギー発症率は、回避群18.6%、(元)早期摂取群4.8%。12か月の中断を挟んでも、早期摂取で獲得した耐性はほぼ維持された
限界: 12か月という中断期間の検証であり、より長期(数年単位)の中断後の耐性持続性は別の研究で検証が必要
研究デザイン: 並行群間ランダム化比較試験(EAT研究)
対象: 英国の完全母乳栄養の生後 3か月の赤ちゃん 1,303名(一般集団、高リスク児に限定しない)
介入: 生後3か月からピーナッツ・加熱卵・牛乳・ごま・白身魚・小麦の6種類を順次導入する「早期導入群」 vs WHO推奨どおり6か月まで完全母乳のみの「標準群」
主要結果: ITT解析では群間差なし(早期導入群5.6% vs 標準群7.1%、p=0.32)。一方、per-protocol解析では有意差あり(2.4% vs 7.3%、p=0.01)。ピーナッツアレルギー 0% vs 2.5%(p=0.003)、鶏卵アレルギー 1.4% vs 5.5%(p=0.009)。「3か月から6種類同時」は理屈の上では有効だが、家庭で計画通り完遂するのが難しいプロトコルだったことを正直に示した研究
限界: per-protocol解析はバイアスのリスクがあるため、ITT解析の結果が公式な評価。「6種類同時」がそのまま日本の家庭に推奨できるわけではない
研究デザイン: 二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験(PETIT研究、日本発)
対象: 日本国内 2 施設の、生後 4〜5か月でアトピー性皮膚炎のある「鶏卵アレルギー高リスク児」121名。全員に対して、研究開始時にアトピー性皮膚炎の標準治療(保湿+外用ステロイド等)を実施し、寛解状態を維持
介入: 生後 6か月から 9か月までは加熱全卵粉末 50mg/日、9か月から 12か月までは 250mg/日を摂取する「早期導入群」 vs 同重量のプラセボ粉末を摂取する「回避群」
主要結果: 1歳時点の経口食物負荷試験での鶏卵アレルギー発症率は、回避群38%(23/61)、早期導入群8%(5/60)(リスク比 0.221、95%CI 0.090-0.543、p=0.0001)。中間解析の段階で効果が明確だったため、データ・安全モニタリング委員会の判断で試験を早期終了。重篤な有害事象は両群で有意差なし
限界: アトピー性皮膚炎のある高リスク児を対象とした研究で、湿疹のない一般乳児への直接適用は別途検討。試験は早期終了のため、サンプル数が当初予定より少ない
研究デザイン: 米国国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)が招集した専門家委員会による、システマティックレビューに基づくガイドライン
対象: 米国内のピーナッツアレルギー予防方針の策定。LEAP研究等のエビデンスを統合
主要内容: ピーナッツアレルギー予防のために、リスク層別に 3 つのガイドラインを提示 ──(1)重度の湿疹・鶏卵アレルギーありの高リスク児は、生後 4〜6か月で専門医評価(IgE・皮膚プリック試験・必要に応じて経口食物負荷)後にピーナッツ含有食品を導入、(2)軽〜中等度の湿疹がある児は生後 6 か月頃に家庭でピーナッツ含有食品を導入、(3)湿疹も食物アレルギーもない児は年齢相応・家族の食習慣に従って導入
位置づけ: LEAP研究をはじめとするRCTの結果を、臨床現場での実装可能な勧告に翻訳した公式ガイドライン。日本小児アレルギー学会の「鶏卵アレルギー発症予防に関する提言(2017)」と方向性が一致
限界: 米国の食文化(ピーナッツが日常的)を前提とした勧告。日本では鶏卵・乳・小麦が主要アレルゲンであり、運用に際しては日本のガイドライン(厚労省「授乳・離乳の支援ガイド」2019改定版、日本小児アレルギー学会の提言)を併せて参照する必要がある