1歳の睡眠、まだ夜泣きが続くのは普通?── お昼寝の回数と寝かしつけ
なぜこの話題が気になるのか
1歳3か月。歩き始めて、指さしも増えて、「赤ちゃん」から「子ども」へ少しずつ変わってきたなあと感じていた矢先に、
- 夜中に2〜3回起きて、抱っこしないと寝てくれない
- 寝かしつけに1時間以上かかる日が続いている
- お昼寝が30分で終わったり、3時間眠り続けたりで、まったく読めない
- 朝寝・昼寝の2回にすべきか、昼寝1回にまとめるべきか、毎日迷う
- ママ友の「うちは夜10時間連続で寝てるよ」という言葉が、ぐさっと刺さる
こうした日々が続くと、「私の寝かしつけ方が悪いのかも」「もう1歳なのに、夜泣きが残っているのは何かのサインなのかも」と、夜中の暗い部屋でぐるぐる考えてしまうことがあります。
結論から先に書きます。1歳児の夜泣きと、お昼寝の不安定さは、研究の世界では「正常範囲のど真ん中」として扱われている現象です。世界中の何百という観察研究が、この時期の子の睡眠が大きく揺れることを記録してきました。そして、いまできる対応として研究的にいちばん支持されているのは、「決まった就寝前の流れ(ベッドタイム・ルーティン)を整える」というシンプルな一手です。
まず、1歳児に必要な睡眠時間はどのくらい?
ここから整理していきます。最初の問いはいちばん基本的なものです ── 「1歳の子は、いったい何時間眠ればいいのか」。
世界でもっとも参照される睡眠時間の指針は、米国睡眠財団(NSF)と米国睡眠医学会(AASM)のふたつから出ています。 National Sleep Foundation の睡眠時間推奨(18人の専門家による系統的レビュー) と、 米国睡眠医学会(AASM)のコンセンサスステートメント(13人の小児睡眠専門家) は、いずれも年齢別の推奨睡眠時間を明示しています。
1歳児に推奨されるのは1日あたり合計 11〜14 時間の睡眠です。これは「夜の連続睡眠+お昼寝(1〜2回)」を合算した時間で、夜だけで14時間眠る必要はありません。たとえば「夜10時間+お昼寝1.5時間」や「夜11時間+お昼寝2時間」も、どちらも推奨範囲のど真ん中です。逆に言えば、合計が10時間に満たない日が続く、あるいは16時間以上眠ってもまったくスッキリしない、という場合は一度かかりつけ医に相談する目安にもなります。
出典:Hirshkowitz et al. (2015) Sleep Health, 1(1), 40-43 / Paruthi et al. (2016) J Clin Sleep Med, 12(6), 785-786
ここで安心していただきたいのは、「14時間」は上限であって目標ではないということです。NSF・AASM ともに、推奨範囲を「11時間でも14時間でも、その子にとってちょうどよければ正常」と幅広く設定しています。「うちの子、12時間しか眠っていない…」と気にする必要はまったくありません。
1歳児の夜泣きは、まだ普通?── 観察研究の答え
次にいちばん気になる問い ── 「1歳になっても夜泣きが続いているのは、おかしいのか?」。
これに対する研究の答えは、はっきりしています。1歳児の夜の覚醒は、まだ完全には消えないのが標準的な姿です。
Sleep Medicine Reviews に掲載された、0〜12歳児の睡眠を扱った34本の観察研究の系統的レビュー は、世界中の親が記録した睡眠日誌データを統合して、年齢別の睡眠の姿を描き出しました。1〜2歳児についてポイントだけ並べると、こうなります。
1歳児では、夜の覚醒(いわゆる夜泣き)が1晩あたり平均1〜2回観察されると報告されています。「6か月で夜通し寝る子もいる」というのは事実ですが、それと同じくらい「1歳半まで夜泣きが続く子」も普通に存在します。Galland らの系統的レビューは、年齢ごとの平均値だけでなく『個人差の大きさ』も強調しており、1歳児の夜の覚醒回数は0〜4回程度まで広く分布することを示しています。数字は研究や測定方法によって幅があるため、ここでは目安として丸めた値です。
出典:Galland, Taylor, Elder & Herbison (2012) Sleep Medicine Reviews, 16(3), 213-222 ほか観察研究より編集部作成
つまり、「1歳になったら夜泣きは終わるはず」というのは、研究データと一致しない思い込みです。早い子は6か月で夜通し眠るようになりますが、1歳半・2歳まで夜の覚醒が残る子も同じくらい普通にいます。
なぜ1歳児はまだ夜泣きするのか ── 分離不安という発達の山
「ではなぜ、1歳になっても夜中に起きるのか?」という疑問に対しては、発達心理学の側から重要な視点が出ています。それが分離不安(separation anxiety)の発達ピークです。
人間の赤ちゃんは、生後8か月ごろから「ママがいない=不安」と強く感じ始め、この感覚はおおむね1歳〜1歳半でピークを迎え、2歳ごろまでにゆるやかに落ち着いていきます。これは、世界中のどの文化でも観察される、人間という生き物に共通の発達現象です。
夜中の覚醒時に「ママがいない!」と気づくと、この発達中の分離不安システムが作動して泣いて呼ぶ ── これは、1歳児の脳が「正常に機能している」証拠でもあります。詳しくは「「ママじゃなきゃダメ」「後追い」っていつまで?── 愛着のはなし」もあわせてお読みいただければと思います。
お昼寝は1回?2回?── 1歳前半と後半の移行期
次の悩みどころ、お昼寝です。「うちの子、朝寝はもうしないけれど昼寝は3時間する」「いやその逆で、朝寝は30分するけれど昼寝はしない」── 1歳児のお昼寝パターンは、まさにバラバラです。
これも研究の世界では、1歳ぜんたいが「お昼寝2回 → 1回」への移行期として記述されています。
1歳前半は「朝寝+昼寝」の2回が中心、1歳後半にかけて徐々に「午後1回」へとまとまっていく ── これが平均像ですが、移行のタイミングは個人差が非常に大きく、12か月で1回になる子もいれば、18か月でもまだ2回必要な子もいます。「もう1歳3か月だから1回にしなきゃ」と無理にまとめる必要はありません。子どもが眠そうにしていて、寝かせれば眠れるなら、それは身体が必要としているサインです。
出典:Galland, Taylor, Elder & Herbison (2012) Sleep Medicine Reviews ほか観察研究より編集部作成
ポイントは3つです。
- 1歳前半(12〜15か月)ではお昼寝2回が標準
- 1歳後半(15〜21か月)で2回 → 1回への移行期に入る子が多い
- 移行のタイミングは個人差が大きく、「平均」より早い・遅いの幅が当たり前
「もう1歳すぎたんだから昼寝1回にすべき」という助言を見聞きすることがあるかもしれませんが、研究データはそれを支持していません。子どもがまだ午前の眠気を訴えるなら、それは2回必要な時期ということです。ここを無理に1回にまとめようとすると、夕方ぐずぐず・夜の寝つきの悪化・夜泣きの増加 ── という悪循環につながりやすいことが、観察研究でも示されています。
ここまでの研究的に効く対応 ── ベッドタイム・ルーティン
「では、1歳の睡眠が安定しないことが『正常範囲』だとして、いまの私にできることは何もないの?」── ここで研究が、ひとつとても具体的な答えを持っています。
それがベッドタイム・ルーティン(bedtime routine)、つまり「決まった就寝前の流れを毎晩同じ順番で繰り返す」という、シンプルな習慣です。
7か月〜3歳の子をもつ405組の母子を対象に行われた、就寝前ルーティンの効果を検証したランダム化試験 は、この領域でもっとも引用される研究のひとつです。
研究の流れを、ざっくり説明します。
- ふだん決まった就寝前ルーティンがない家庭を募集
- 「お風呂 → ローション(全身マッサージ)→ 静かな活動(絵本や歌)→ 消灯」という3ステップのルーティンを2週間導入
- ルーティン導入の前後で、子どもの寝つき時間・夜の覚醒・睡眠の質、そしてママの気分を比較
結果は、研究者たち自身が「想像以上にクリアだった」と書いているほど、はっきりしたものでした。
ベッドタイム・ルーティンを2週間続けるだけで、寝つきの時間が短くなり、夜中の覚醒も減り、起きてしまっても再入眠が早くなる ── そしてママ自身の気分も改善する、という結果が報告されました。バーの長さは「効果の方向性のイメージ」を示すもので、研究の正確な数値ではありません。重要なのは、すべての指標で『同じ方向に』効果が出たことです。研究費・薬・特別な機材を一切使わない、家庭ですぐ始められる介入で、ここまでの結果が観察されました。
出典:Mindell, Telofski, Wiegand & Kurtz (2009) Sleep, 32(5), 599-606
ここで強調したいのは、ルーティンの「中身」は何でもよいということです。Mindell らの研究では「お風呂・ローション・絵本」が選ばれましたが、その後の研究で重要なのは「同じ順番・同じ時間帯・同じ場所」で毎晩繰り返すことそのものだとされています。子どもの脳が「この流れが来たら、次は寝る時間だ」と予測できることが、入眠を助けるからです。
家庭ですぐ試せる、シンプルなルーティンの例
研究の知見をふまえた、ありふれたパターンを並べてみます。あくまで「例」であって、ご家庭の事情に合わせて自由に組み替えていただければと思います。
- お風呂 → パジャマ → 絵本1冊 → 部屋の電気を消す → 子守唄
- 夕食 → 歯みがき → ぬるめのお風呂 → 静かな遊び5分 → 寝室へ
- お風呂 → 部屋の照明を間接照明だけに → 絵本2冊 → ハグ → 消灯
ポイントは3つです。
- 所要時間は20〜45分くらいに収める(短すぎると効果が弱い、長すぎると逆効果)
- 毎晩、同じ順番で繰り返す(順番が同じであることが、子どもの予測を助ける)
- テレビ・スマホ画面は外す(光と刺激が入眠を妨げることが多くの研究で示されている)
「これだけ?」と感じるかもしれません。しかし、シンプルだからこそ、忙しい日も体調が悪い日も続けられる ── というのが Mindell らの研究の含意でもあります。
「やってはいけない」より「やらなくてよい」を整理する
ここまで読んでくださって、「じゃあ、私が悩んでいる夜中の対応はどうすればいいの?」という具体の疑問が残っているかもしれません。研究の現状をふまえて、「これは無理に頑張らなくてよい」と整理できるものを並べます。
研究データとあわせて整理すると、こうなります。
- 夜泣きを「ゼロ」にしようとしなくてよい:1歳児で1晩1〜2回の覚醒は標準範囲
- お昼寝を無理に1回にまとめなくてよい:1歳前半で2回、後半で1回への移行が一般的
- 抱っこ・添い寝での寝かしつけをやめなくてよい:長期の発達への悪影響は確認されていない
- 「ママ友より睡眠が短い・夜泣きが多い」を気にしなくてよい:個人差が非常に大きい時期
- 「完璧なルーティン」を目指さなくてよい:不規則な日が混ざっても、続けることに意味がある
その上で、「やる価値のある一手」として研究が支持しているのは、毎晩同じ順番のベッドタイム・ルーティンを2〜3週間続けてみるということです。これだけです。
1歳3か月のあなたへ ── 対話
最近、夜中に2回は起きて、抱っこしないと寝てくれません。「もう1歳すぎたのに、まだ夜泣きが続くなんて、私の関わり方がよくないのかな」って、毎晩自分を責めていました。
1歳3か月で1晩に1〜2回の夜泣きは、世界中の観察研究で「ど真ん中の標準的な姿」として記録されているものです。「ママの関わり方がよくない」サインではまったくないんですよ。1歳半・2歳まで夜の覚醒が残る子も普通にいます。
そうなんですね…。お昼寝もすごく不安定で、朝寝が30分の日も、しない日もあって。「もう昼寝1回にまとめるべきなのか」って毎日迷っています。
1歳前半は「朝寝+昼寝」の2回が標準、後半にかけて1回に移行していく時期なんです。お子さんが朝の眠気を訴えるなら、それは身体がまだ2回必要としているサインです。「平均」より早い・遅いの幅が当たり前で、無理に1回にしようとすると逆に夜泣きが増えることもあります。
じゃあ、いま私にできることって、何かあるんでしょうか?
研究的にいちばん支持されている一手は、シンプルです。毎晩同じ順番のベッドタイム・ルーティンを作ること。お風呂→絵本→消灯、のようなものを2〜3週間続けるだけで、寝つきが速くなり、夜の覚醒も減るという研究結果が出ています。
お風呂と絵本…うちもなんとなくそれに近いことはしているんですが、順番がバラバラかもしれません。
じつは「順番が一定であること」自体が効くんです。お子さんの脳が「この流れが来たら、次は寝る時間だ」と予測できるようになる。今夜から、いつもの行動を同じ順番で繰り返してみてください。それだけで研究的には十分な一手です。
なんだか、肩の力が抜けてきました。「夜泣きをゼロにしなきゃ」と思っていたけれど、そうじゃないんですね。
そうです。1歳の夜泣きはゼロを目指すものではなく、「いまはこういう時期」と受け止めてあげるもの。お子さんが夜中に呼んだときに応じて抱っこしているあなたは、何も悪くしていません。むしろ、信頼できる大人がそばにいる、という安心感を毎晩届けているんですよ。
まとめ ── 1歳の睡眠と、ご自身に伝えたいこと
研究を整理してきた最後に、シンプルに3つだけ書いておきます。
- 1歳の夜泣き(1晩1〜2回)・お昼寝の不安定さ・寝かしつけ時間の長さは、世界中の観察研究で「正常範囲のど真ん中」として記録されている
- いまできるもっとも研究的に支持された一手は、毎晩同じ順番のベッドタイム・ルーティンを2〜3週間続けること
- 抱っこ寝・添い寝・夜中の応答 ── これらをやめる必要はなく、長期の発達への悪影響は確認されていない
1歳3か月の今、夜中に何度も起きて、お昼寝のリズムも読めず、自分を責めている方へ。あなたは何も間違っていません。研究の世界では、いま目の前で起きていることはすべて「1歳という発達段階に当たり前に観察されること」として整理されてきました。今夜から「順番を決めた、いつもの就寝前の流れ」をひとつだけ作ってみる ── それだけで、研究的には十分な一歩です。
研究の詳細
Primary sources研究デザイン: 18人の多分野専門家パネルによる、年齢別推奨睡眠時間の系統的レビューと合意形成
対象: 6つの年齢層(新生児〜高齢者)について、過去の睡眠研究を統合的に評価
主要結果: 1〜2歳児に推奨される総睡眠時間は1日あたり 11〜14 時間(夜間睡眠+お昼寝の合計)。10時間未満または15時間以上の場合は「推奨範囲外」、10〜11時間または14〜15時間は「条件付きで適切な可能性あり」と分類された。米国睡眠財団(National Sleep Foundation)が公式に発表した、世界でもっとも参照される睡眠時間ガイドラインのひとつ。
限界: ガイドラインは「集団としての推奨」であり、個別の子どもにそのまま当てはめるものではない。個人差が大きい年齢ほど、推奨幅も広く設定されている。
研究デザイン: 米国睡眠医学会(AASM)の小児睡眠専門家13名による、修正RAND法を用いたコンセンサス・ステートメント
対象: 4か月〜18歳の小児・青年について、年齢別推奨睡眠時間を策定
主要結果: 1〜2歳児に推奨される睡眠時間は、お昼寝を含む1日あたり 11〜14 時間。AASM はこの睡眠時間を継続的に確保することが「総合的な健康(認知・行動・身体・精神面)」に関連するとし、米国小児科学会(AAP)、米国胸部学会、米国神経学会など主要医学会から正式に承認された。NSF の指針(Hirshkowitz 2015)とも数値が一致しており、年齢別推奨睡眠時間に関する国際的なコンセンサスが形成されたことを示す。
限界: 観察研究にもとづく専門家合意であり、ランダム化比較試験で「この時間眠ると発達がよい」を直接示したものではない。
研究デザイン: 0〜12歳児の睡眠を扱った観察研究の系統的レビュー(PRISMA 準拠)
対象: 質問紙または睡眠日誌データを用いた 34本 の観察研究を統合
主要結果: 年齢別の睡眠時間・夜の覚醒回数・寝つき時間・最長連続睡眠・お昼寝回数の平均と個人差を整理。1歳児では夜の覚醒が1晩あたり平均1〜2回観察され、その個人差は0〜4回程度まで広く分布することを示した。お昼寝の回数は1歳前半で2回、1歳後半で1回への移行が中心という年齢パターンも確認された。乳幼児期の睡眠は「平均」より「個人差」が際立って大きい時期であることを、世界中のデータで裏づけた重要なレビュー。
限界: 元データの大半が親の主観報告(質問紙・日誌)であり、客観的な睡眠測定(アクチグラフィ、ポリソムノグラフィ)とは数値がずれる可能性がある。文化・地域の偏りもある。
研究デザイン: ベッドタイム・ルーティン導入の前後比較研究(7-18か月児 n=206、18-36か月児 n=199、合計 n=405)
対象: ふだん決まった就寝前ルーティンがない家庭を募集し、「お風呂 → ローション(マッサージ)→ 静かな活動 → 消灯」という3ステップのルーティンを2週間導入
主要結果: ルーティン導入後、寝つきまでの時間が有意に短縮、夜中の覚醒回数・覚醒時間が有意に減少、合計睡眠時間が延長した。さらに、母親の気分(POMS スケールで測定)も有意に改善し、疲労・緊張・抑うつの低下が観察された。介入は薬や特別な機材を一切使わず、家庭ですぐ実施可能なシンプルなものだった点が高く評価されている。同じ研究グループのその後の14か国国際比較研究(約1万組の母子)でも、同方向の結果が文化を超えて確認されている。
限界: 対照群が「ルーティンなし継続」ではなく前後比較中心のデザイン。家庭の自己報告データに依拠している。